ツロブテロール経皮吸収徐放型テープのメカニズム_4

薬物の吸収を話した際に,単純拡散と能動輸送に触れたことを思い出してください.消化管での吸収は両者を考えますが,経皮吸収ではほぼ単純拡散で吸収されます.この単純拡散,物質の拡散を説明するときに使われるのがFiskの法則(第1法則です,第1というぐらいですから,第2法則もあります)です.

図5.Fickの第1法則のイメージ

図5.がFickの法則のイメージ図と式を示します.Fickの法則は薬剤師国家試験に頻出と言って良いほど出題されています.看護師国家試験を調べてい際に気付いたのですが,最近は厚労省が管轄する国家試験は,厚労省のサイトで公開しているんですね.驚きましたし,便利ですね.図5ですが細胞膜を隔てた細胞外液と細胞内液間の拡散を示しています.もう一つ,Fickの法則を説明する際にモデルとされる薬物は比較的脂溶性が高いものです.ですから,図中の”ココに注目”で示したように,細胞液中より細胞膜中の方が濃度は高くなります.これも覚えていてください.

次に,式を確認します.

J=D×S×dCdx=D×S×K×CoutCinLJ=D\times S\times \dfrac{dC}{dx}=D\times S\times K\times \dfrac{C_{out}-C_{in}}{L}・・・(1)

でした.式中の文字の意味は,

J:透過速度(流束)
D:薬物の膜中の拡散係数
S:膜の有効面積
K:薬物の膜への分配係数
L:膜の厚さ
Cout:細胞外溶液の薬物濃度
Cin:細胞内溶液の薬物濃度

Fickの法則をまとめると,”透過速度(流束)は,濃度勾配に比例して細胞膜の厚さ反比例する”でしたね.流束(J)は,単位時間,単位面積当たりの分子数と考えてください.そうすると,膜の厚さ(L)が大きいと流束は小さくなり,薬物の膜への分配係数(K)が大きいと流束は大きくなります.つまり,分子が多く流れるとこを示しています.講義で触れたように,一つ一つのパラメータが変化した結果に注意するようにしましょう.式は,怒られそうですが,覚えなくても大丈夫でしょう.

Fickの法則の式の説明した際に,多かった質問は”K(分配係数)”に関してで,”センセ,なんで急にKが出てきたの?”というものでした.ちょっと考えてみましょう.以下,すべて理想的な状態で物事が推移するという前提です.

濃度勾配(dC/dx)は,(CoutーCin)/Lとしていますが,細胞液中よりも細胞膜であるリン脂質2分子膜中の方が相対的に脂溶性(疎水性)が高く,脂溶性の高い分子にとってエネルギー的に安定するため濃度が高くなります.従って,実際は(C1ーC2)です.

分配係数は,油水分配係数とも言われています.(油に溶けている薬物量)/(水に溶けている薬物量)で求められる値です.測定方法は,油と水を同量を混合し,そこへ薬物を入れ長時間振盪しそれぞれの薬物濃度を測定し計算します.油は,一般的には,n-octanolが使用されます.これは,他の溶媒と比べると,多数の薬物で実験した結果,n-octanolを使用して得られた数値と生体膜の透過性の数値が,比較的相関が高いために選択されます.

注:分配係数が高い薬物ほど,脂溶性が高い,つまり油に溶けやすい性質を示します.

Kで表す分配係数は,細胞膜の成分と細胞内外の細胞液の組成はほぼ同一ですから.

K=C1Cout=C2CinK=\dfrac{C_{1}}{C_{out}}=\dfrac{C_{2}}{C_{in}}・・・(2)

ですね.ですから,

J=D×S×dCdx=D×S×K×C1C2LJ=D\times S\times \dfrac{dC}{dx}=D\times S\times K\times \dfrac{C_{1}-C_{2}}{L}・・・(3)

になり,ここで,(2)式より,C2=CinCout×C1{C_{2}}=\dfrac{C_{in}}{C_{out}}\times {C_{1}}

これを(3)式に代入すると

J=D×S×C1(1CinCout)L=D×S×C1Cout(CoutCin)LJ=D\times S\times \dfrac{ C_{1}\left( 1-\dfrac{C_{in}}{C_{out}}\right)}{L}=D\times S\times \dfrac{\dfrac{C_{1}}{C_{out}} \left( C_{out}-C_{in}\right)}{L}

になります.(2)式よりC1/Cout = Kですから(1)式になり,透過速度は分配係数Kに比例するとことがわかります.