” 小児用抗生物質顆粒は服用時に使用する飲料のpHで味が変化する_4”の項で触れたツロブテロール経皮吸収型テープの徐放化のメカニズムを説明します.最初に薬物の経皮吸収の再確認をしてから,経皮吸収型徐放製剤のメカニズムとバルプロ酸ナトリウム徐放顆粒のセレニカR顆粒の関連に触れます(”同一成分含有の2種類の徐放性製剤,互いに交換可能か?”の項の最後で触れた内容です).
なお,今回は薬学部で学ぶような内容です.少し取っ付きにくいと感じると思いますが,実際の製剤の開発の経緯を知るには最適なので,薬学部で話す内容をある程度そのまま掲載します.必ず将来役立つので繰り返して読んでみてください.
ツロブテロール経皮吸収徐放型テープの先発医薬品はホクナリンテープです.ホクナリンの主成分はβ2刺激薬である”ツロブテロール”で気管支拡張作用を期待して汎用されています.講義で触れました.覚えていますか?ホクナリンには,内用剤と外用剤の2種類があります.成人における両者の通常の使用方法を確認すると,
ホクナリン錠1mg 1回1錠,1日2回経口投与
ホクナリンテープ 1日1回2mg,胸部,背部又は上腕部のいずれかに貼付する.
となっています.ここで両者の血中濃度グラフを比較してみましょう.

図1.に,ホクナリン錠とホクナリンテープの血中濃度グラフを同一時間スケールで表示しました(今後も同様に,同一時間スケールで薬剤の血中濃度を比較します).まずこのグラフが得られた際の投与条件等を整理しておきます.数値は添付文書からの引用です.
| 主成分 | 投与量 | Cmax | |
| ホクナリン錠 | ツロブテロール塩酸塩 | 2mg(1mg X 2) | 6ng/mL |
| ホクナリンテープ | ツロブテロール | 2mg | 1.35ng/mL |
注意して欲しいのは,主成分に関して,ホクナリンテープは”ツロブテロール”であり,ホクナリン錠の”ツロブテロール塩酸塩”と異なる点です.これは後でたいへん重要になります.ツロブテロールの最小有効血中濃度は不明ですが,図1からわかるようにホクナリンテープでは1日1回の使用である程度の血中濃度が維持されています.また,ホクナリン錠の場合は,通常の投与量の2倍である点にも注意してください.両者のCmaxを比較すると,ホクナリン錠の通常の投与量は1mgですから,少々不正確な推定になりますが,1mg投与であれば”Cmaxは3ng/mL”と想定できます.
ホクナリン錠では1日2回の服用になりますが,ホクナリンテープは1日1回の使用ですみます.貼付剤であり1日1回の使用でOK,これは画期的だと思いませんか.なおホクナリンテープは1998年に発売され,たいへん意義のある”長時間の全身作用型外用剤”として複数の権威ある賞を受賞しています.
貼付剤であれば,嚥下困難な患者さんへの使用にはたいへん有効です.万が一,なんらかの有害反応が起きた際には,使用している貼付剤を剥離することで,それ以上の有害反応の悪化を防げる可能性が高くなります.次に,単に”胸の辺りに張るだけ”という使用方法は,たとえば認知機能が低下している患者さんへの投与を考えると,経口投与よりたいへん簡便です.それ以外の患者さんでもアドヒアランスの向上が期待できます.さらに,私が考える全身作用型外用剤の最大のメリットは,”初回通過効果を受けない(覚えていますか?)”ことです.これにより薬物の効果を最大限に発揮させることが可能になる剤形でしょう.

