ここまでが,教科書的な説明です.なんだかわかったようなわからないような感じがしませんか.私は学生時代にピンときませんでした.そこで,Fickの法則を説明する際に図6.を使用しています.図は私が簡略化したので,正確な知識は物理化学の教科書等を参考にしてください.

図6.を見てください.Fickの法則で示されるのは,”単位面積,単位時間あたりの物質の移動量”です.ここが重要で,以下,これを前提に考えます.それで,もし,坂の上にあるビー玉が多くなれば,坂の下とは濃度差は大きくなり(坂の上と下の分子数の差を濃度勾配と考えてください,濃度勾配は大)移動する分子数は増加します.膜が厚くなれば単位時間当たりの移動量は減少します.また,坂道がデコボコであれば,ビー玉はカクカクして動きが悪くなるので,これは膜がスカスカの場合としっかり詰まったものの違いを示し,デコボコならしっかり詰まった状態になり移動量は減少します(薬物の膜中の拡散係数は減少).坂道の途中にある”窓”は膜の有効面積と考えてください.窓が大きければビー玉はたくさん通ることが可能になります.あくまでも簡略化したイメージですが,理解しやすいと思います.なお,これを薬物吸収と考えると,坂の下は体内と想定できます.体内は貼付した局所に比べると,とんでもなく大きいです.ですから,坂の下のビー玉はすぐになくなると思ってください.
ここでの注意点は,フィックの法則の式(式1)の先頭に”ー(マイナス)”をつけている場合もあります.なんでかというと,坂道は左上から右下に下がっていますね.これを一次式で示せば,y=-ax+bになるでしょ.なので式の先頭に”ー”をつけます.ただ,ここでは,”ー”を付けずに説明します.

ここまで見てきたように,濃度勾配が小さくなれば透過量は少なくなります.これを外用剤の経皮吸収で考えます.図7.をみてください.ある薬物20分子を含む外用剤を貼付します.特定の時間当たり1分子吸収すると仮定すると,時間を経るに従い膏体中の溶解している分子数は減少し濃度勾配は小さくなります.

その結果,時間経過により濃度勾配は低下し,結果,薬物の吸収量は減少します(図8.).外用剤に何らかの工夫を加えない限り,ホクナリンテープのような長時間血中濃度を維持する製剤は実現しません.

