ツロブテロール経皮吸収徐放型テープのメカニズム_7

これまで見てきたように,薬物の放出を制御し長時間作用する外用剤(貼付剤)が開発されました.長時間作用する外用剤のメリットは,当然,投与回数は少なくなり,単に皮膚に貼付するだけの比較的簡単な投与方法ですから,経口投与や吸入投与できないような患者さんに最適です.また,皮膚に貼付するだけですから,剥がせば効果はなくなり,経口投与で問題になる食事などの内容との相互作用も無視できます.さらに繰り返しになりますが,薬物の初回通過効果が回避できます.

このように優れた性質を有し,良いことばかりの長時間持続性経皮吸収製剤ですが,あまり普及していません.なぜでしょうか?

その理由については,以下の点が考えられます.現時点では,利用可能な薬物が限定されています.これが一番大きな要因です.利用可能な薬物は,分子量が小さく,脂溶性が高く,少量で薬理効果を発現するものに限られています.一番わかりやすい”少量で薬理効果を発現”の例を確認しましょう.図10.を見てください.

図10.ロキソニンとホクナリンテープの血中濃度比較

このように,ロキソプロフェンの通常使用されている濃度とツロブテロールの濃度をグラフで比較すると一目瞭然ですね.ロキソプロフェンの貼付剤の濃度とも比較してください.モル濃度で比較すると,下の表になります.

分子量は,ロキソプロフェンNaは約304,ツロブテロールは約228です.モル濃度に注目すると,これからツロブテロールは少しの分子数で薬理効果が発現することがわかります.さらにホクナリンテープの場合,対象となる疾患の関係で,長期間の使用が前提になりその間の皮膚刺激も懸念されます.しかし,この点は現在の使用状況から解決していると考えられ,当時の北陸製薬の技術力の高さがうかがえます.

皮膚のバリアー機能を突破するために,数十年前になりますが,外部エネルギーを利用した薬物の皮膚透過促進システムが話題になっていました.微弱電流を用いた経皮送達技術であるイオントフォレシス(IP)と呼ばれていました.当時,私は”じゃあ,バッテリーを常に体に装着しないとダメなんじゃん.世の中にはおかしな事を考えるヒトもいるもんだ”と思いました.時代が進み,それに伴い材料科学などの急激な進歩で,あながち不可能でもないのではと感じます.高齢化に伴い,皮膚に貼付するだけで十分な効果を期待できる製剤の開発は望まれています.今後に期待しましょう.