このように機能的に優れた剤形の製剤は,今後多数販売されるだろうと思っていました.ところが,同種の製剤はなかなか発売されていません.なぜでしょうか.この点を考えるために他の成分をみてみましょう.ロキソプロフェンナトリウムを例に考えます.

図2.をみてください.これはロキソニンパップ100mgのインタビューフォームから引用した血中濃度グラフです.投与量に注意してください.投与量は,ロキソプロフェンナトリウム100mg含有の貼付剤を4枚,計400mgの投与になります.そして,ロキソニンパップでも血液中にわずかですがロキソプロフェンが検出されます.

ホクナリンテープと同様に経口剤との血中濃度の比較をしてみましょう(図3.未変化体の血液中濃度).グラフは,semilogarithm plot(片対数)である点に注意してください.
同様に条件などを整理します.
| 主成分 | 投与量 | Cmax | |
| ロキソニン錠 | ロキソプロフェンNa | 60mg | 5.04ug/mL |
| ロキソニンパップ | ロキソプロフェンNa | 400mg(100mg X 4) | 89.2ng/mL |
ロキソニンパップを使用しても血液中にロキソプロフェンは検出されますが,経口剤と比較すると非常に低濃度です.ロキソニンパップで得られたCmaxは,経口剤ではどれだけの量で実現するでしょうか?たいへん強引な推計ですが,1.06mgになります.ロキソプロフェンナトリウムを約1mg経口投与したとして,全身に作用する効果は期待できるでしょうか? このように,ロキソプロフェンナトリウムでは経皮吸収される量は少ないとこがわかりました.ではツロブテロール(ホクナリン)との違いはどこにあるでしょうか.
まず,皮膚の構造と役割を考えてみましょう.

皮膚の構造を再確認しましょう(図4.).角質層を含む表皮,真皮,皮下組織の順でした.血管は”真皮”にあります.薬物が血液中に移行するためには真皮まで到達する必要があります. では皮膚の生体にとっての意義ですが,なんだと思いますか?
皮膚が果たす役割は様々有るでしょうが,一つは”自己と非自己の境界を作っている”とされています.つまり自己の成分と異物を区別する境界ということです.ですから,自分にとっての異物は体内に入り込まないようにしているのが皮膚です.本来,外用剤からの薬物の吸収は期待しにくいのです.これは化粧品でも同様です.
経皮吸収では,一般的に3つの経路があるとされています.
1.角質層を経由
2.汗孔を経由
3.毛孔を経由
以上です.そして,薬物の経皮吸収の経路は主に”1.角質層を経由”とされています.そして,皮膚のバリアー機能の大部分を果たすのは角質層です.では,角質層は,”親水性”と”疎水性”で分ければ,どちらでしょうか?言い方を変えると,”水っぽいか”と”油っぽいか”です.

