弱塩基性で水に難溶の薬物の代表であるイトラコナゾールを例にして,物質の水への溶解を考えます.

水への溶解性を示す指標として,”分配係数”があります.これは,同量の水と油(通常は,n-オクタノール)を混合し,そこへ薬物を入れてシェイクします.少し待つと水と油は分離し,両者に溶解している薬物濃度を計測し,その比を取ります.ですから,油水分配係数と呼ばれます.計算は,
油に溶けている量/水に溶けている量
なので,数字が大きいほど油に溶けやすいと考えられます(水へは溶けにくい,となります).
イトリゾールカプセルのIFから,H2ブロッカー,PPI,制酸剤併用時の注意事項を確認します.

上の図の下部の文章に注意してください.胃内pHが上昇するとイトラコナゾールの吸収量は低下するとの報告と差異は認められないとの報告があります.
胃内pHを上昇させるOTCの添付文書も確認しましょう.

では,H2ブロッカーやPPIを服用した祭の胃内pHの変化をみてみましょう.

胃内pHは,平常時はpH1-2,PPIを服用すると約pH6-7程度まで上昇することがあります.
弱塩基性の薬物であるイトラコナゾールは,胃内pHが上昇すると吸収量が低下する可能性があるということですね.では,クラリスロマイシンDSの箇所でふれたように,イトラコナゾールを酸性の飲料で服用すれば吸収量は上昇するのでは?と思いませんか?.

D.Langeらの報告では,イトラコナゾールとラニチジンの併用,及び酸性飲料としてコーラを選択し,イトラコナゾールのAUC,Cmaxの変化を検討した1).ラニチジン併用ではAUC,Cmaxとも低下し,それをコーラで服用することで回避できたとしています.小熊らは,黒酢併用で検討しました.こちらの論文は,いつも紹介してる”J-STAGE”で入手可能です(詳細は”文献(論文)の検索と入手”で再確認してください).興味があれば読んでみてください.上の図に示すように,イトラコナゾールと酸性飲料の併用で,イトラコナゾールのCmaxは上昇する可能性が示唆されました.
薬理学Ⅰでお話しましたが,もう一度,ものが水に溶けるとはどういうことかを考えてみます.



ごく簡単に,”塩基(アルカリ)性の物質は酸性の水に良く溶ける”と覚えてください.ですから,塩基性のイトラコナゾールは,水が酸性側から塩基性側に変化(胃内pHが上昇)すれば溶解度が低下し,結果,吸収量が低下すると考えられます.
イトラコナゾールと胃内pHを上昇させる薬物が併用される場合,イトラコナゾールの吸収量が低下する可能性があることに注意してください.
最後に,イトリゾールを食事の有無による際の血中濃度の違いを確認しましょう.

液性の違いが溶解性に及ぼす影響とは関係ありませんが,イトラコナゾールは食後服用で吸収量は増加します.
ここま3回に分けて学んだ内容が含まれる薬剤師国家試験問題を見つけました.次の項でみてみましょう.
引用文献
1)D.lange et al.,Effect of a cola beverage on the bioavailability of itraconazole
in the presence of H2 blockers. J Clin Pharmacol, 37,535-540(1997)

