外用剤を混合する際の注意点(基剤の変質)

アトピー性皮膚炎の治療では,外用剤を複数使用する場合があります.その際に,例えばステロイド含有の外用剤と保湿目的の外用剤の組み合わせが多くあります.

2種類の外用剤の使用時,別々の製剤であれば2回塗ることになりますが,予め混合してあれば1回塗るだけですみます.内用剤で1日3回の服用より1日1回の服用の方が飲み忘れる例が少ない,このように指示通りキチンとくすりを使用することを【コンプライアンス】と呼び,患者の主体性を基準にすると【アドヒアランス】でしたね.

このような目的で外用剤の混合が行われていることが報告されています1)

しかし,外用剤の種類によっては,混合に関して注意を払うべき製剤が存在します.

一例として,大塚製薬の”モイゼルト軟膏(ジファミラスト)”を例にして考えます.

引用元:モイゼルト軟膏,インタビューフォーム,大塚製薬株式会社,2024年10月改訂(第6版)

まず最初に,モイゼルト軟膏のインタビューフォームを確認します.

このように,他剤との配合に関する注意点として,

”本剤は基剤中に微細な液滴として分散した液滴分散系軟膏であり、他剤と混合することにより液滴が合一して大きくなるため、混合することは好ましくない。”

と記載されています.

ここで,”液滴分散系軟膏”とはなんでしょか?これは,主成分が基剤への溶解性が低いため外用剤としての役割を十分果たせないため等の理由で,主薬を溶解させる成分(炭酸プロピレン)を加え,それに成分を溶解させ軟膏にしたものです.ですから,特殊な製剤になり,多くの製剤と同様,単独での使用が前提の外用剤です.

次に文中の”合一”とはなんでしょうか.これは,モイゼルト軟膏に他の外用剤を加えること(混合)で,本来の成分以外が混入する異なり,安定していた基剤が変化し,小さな液滴同士が接触しより大きな液滴に変化する現象のことです.合一がさらに進行すると全体が分離する可能性が考えられます.

以上をイメージとして図にすると以下になります.

同様の液滴分散系の外用剤としては,プロトピック軟膏などがあります.

このように,患者の利便性を考慮して外用剤を混合する例は多くありますが,混合に際して注意すべき外用剤があることを覚えておいてください.

このような事例に出会ったら,まず処方医に処方内容や指示の意図を確認しましょう.外用剤の混合の可否については,メーカーや薬剤師に問い合わせをしましょう.

注意点は,10年ほど前に比べて外用剤の混合に関しての情報は増えてきましたが,混合される外用剤の組み合わせは無数にあり,それらすべてを検討することはたいへん困難なので欲しい情報が得られない場合も多いことです.ただ,比較的汎用されている外用剤の組み合わせでの情報は容易に入手可能だと思います.

reference

1) 大谷道輝,外用剤の適正使用の問題点,日本香粧品学会誌,Vol. 38, No. 2, 96–102,2014