現在でも汎用されている刺激性の便秘治療薬は,長期間使用すると使用量が増えるという”習慣性”があった.この点の改善を目指した新たなメカニズムで効果を発現する薬剤が複数販売されました.

各薬剤にはそれぞれ特徴はありますが,基本的は”固くなった便を柔らかくして排便しやすくする”というものです.
この作用が一番理解しやすい薬剤を例にして考えてみます.
引用元:モビコール配合内用剤,インタビューフォームより,持田製薬株式会社
上に引用したように,主成分であるポリエチレングリコールの浸透圧効果により,腸管内の水分量が増えて,固くなった便が柔らかくなり排便を容易にします.
なお,ポリエチレングリコールは”マクロゴール”とも呼ばれています.外用剤の基剤などに多く使われています.
またポリエチレングリコールは,経口投与された場合,ほぼ吸収されません.
次に,浸透圧を考えてみましょう.

上の図の左側を見てください.色の薄い方には分子が4個,色の濃い方には分子が8個ありますね.両者は半透膜で区切られています.
ここで,半透膜を消化管,色の薄い方が体内,色濃い方が消化管の中と考えてください.
両方の水は同じとすると,色の濃い方が分子の濃度は濃いですね.半透膜を介すると,”同じ濃度になるように水が移動”します.これは覚えておいてください.
先に述べたように,ポリエチレングリコールは体内に吸収されませんから,消化管にいつまでも残ります.そうすると体内には存在しませんから,簡単に考えると,同じ濃度になるように体内から水が消化管に移動,または水の消化管からの吸収が抑制されると考えられますね.結果,消化管内は通常より多くの水が存在することになり,便が柔らかくなります.
他の薬剤は,胆汁酸の再吸収を抑制(消化管内の胆汁酸の量は増加)させて効果を発現させる薬剤もあります.
いずれにしろ,主な作用は”固い便を柔らかくする”です.

上に示した新しい便秘治療薬は,効果は高いですが汎用されている刺激性便秘薬に比べ比較的高い薬価に設定されています.良質な日本の医療の今後の継続的な提供の観点からは一考の余地があるように思います.
最後に,インタビューフォームの最初の方に記載されている”開発の経緯”は,非常に有用な内容です.現状の問題点や課題,それに対してどのようにアプローチして製品が開発されたかがわかります.機会があれば目を通してください.