よく耳にする”薬物の副作用”について考えてみます.
みなさんのなかで,鼻炎の薬を飲んで,のどが渇いた経験のある方はいませんか?
この事例はいつも話しますが,副作用を考える上で最適だと思っています.添付文書はm一般用医薬品の”パブロン鼻炎速溶錠EX”から引用します.
添付文書中の”相談すること”に
とあります.”口のかわき(のどの渇き)”は添付文書に載っているぐらいですから比較的多くある事例なのでしょう.
この現象を引き起こす要因を考えるために,成分を確認します.
成分中のベラドンナ総アルカロイドが原因です.
ベラドンナ総アルカロイドは,ナス科植物の根から取れる成分で,古くから薬として使われてきました生薬です(天然のものですね).
ベラドンナ総アルカロイドのはたらきは,”分泌抑制による鼻水をおさえ”となっています.
これはベラドンナ総アルカロイドのアセチルコリンの作用を阻害する【抗コリン作用】の結果起こります(末梢神経に作用するくすりで学びます).
”鼻水”は,体内から鼻腔へ様々な成分を含んだ水分がでる現象です.ここで,体内から水分が出る現象は何かないかと探すと,ありますね,唾液です.
ベラドンナ総アルカロイドが,鼻水を出す機能だけを抑制すればこんな良いことはありませんが,鼻水が出るのを抑制すると同時に,唾液の出も抑制します,唾液が出なくなりますから,のどが渇くと感じます.
ここで,少し考えて欲しいのですが,鼻水を止めるのも,唾液の出を抑制するのもベラドンナ総アルカロイド本来の効果です.
それを,ヒトにとって良い反応,この場合は”鼻水を止める”は効能に書くような良い反応.期待していない”のどが渇く”は悪い反応,これを”副作用”と呼んでいると思います.
繰り返しますが,両方の反応ともベラドンナ総アルカロイドの抗コリン作用による”主作用”です.従って,ベラドンナ総アルカロイドを鼻炎治療目的で服用する限り,”口渇”は避けて通ることは出来ません.副作用にはこのようなケースもあります.