薬物の代謝は,主に【肝臓】で行われます.代謝された薬物は,水溶性が増し排泄されやすい形に変化します.
代謝には,2つの過程が知られていて
第Ⅰ相反応・・酸化や還元,加水分解などの反応【異化反応】
第Ⅱ相反応・・グルクロン酸などの水溶性の高い物質と結合【抱合反応】
※第Ⅰ相反応,第Ⅱ相反応は必ずしも連続しておこるわけではない.
第Ⅰ相反応に関与している酵素でよく知られているのは【シトクロムP450,cytochrome】.
シトクロム(CYPと略記されることもある)には,多くの種類があり,その活性は遺伝的背景で活性が異なり,薬物の効果発現などに違いが生じることもあります.
代謝により薬物の立体構造が変化し,その結果,”受容体に結合できない”をもう少し説明すると,以下の図を見てください.
黒色の立体は”炭素原子”です.薄い水色の球体は”水素原子”です.
左側の分子は,黒が2個,水色が6個で,CH3-CH3です.この分子の名前を覚えていますか?
右側の分子は,炭素-炭素間に2重結合があり,CH2=CH2です.名前を覚えていますか?
ここで大事な点は,2重結合により,エタン(左側)とエチレン(右側)の炭素-炭素の距離が異なる事で,立体構造が異なっています(水素原子の数の違いもありますが).
薬理効果を発現する形の薬物に,何らかの原子を加える,または,グルクロン酸などを結合させると,元の薬物の構造は変化し受容体に結合できず効果を発揮しないとなります.
※薬物と受容体の関係を”鍵(薬物)と鍵穴(受容体)”にたとえる事がありますが,代謝により鍵が変わったわけです.その結果,変化した鍵は鍵穴に入らず鍵が廻らない,つまり効果が発現しなくなります.
経口投与された薬物は,全身循環されるまえに,門脈を経由して肝臓に至り代謝を受けます.この過程を【初回通過効果】
図をよく見てください.初回通過効果を受けない投与経路があり,代表的な部位は【口腔】【直腸下部】です.
薬物の主な排泄経路は,【腎臓を経由して尿】と【胆汁を経由して便】