02.03-1 吸収と分布-1

くすりの基礎

本サイトで何度も例にしているバファリンを飲んだ際の,有効成分のアセチルサリチル酸(アスピリン)の時間毎の血中濃度を測定したデータからグラフを作成したものを示します(医療用バファリンの添付文書データから作成).

薬剤の添付文書には,ほぼすべて同様の血中濃度変化グラフが掲載されています.蛇足ですが,縦軸は血中濃度,横軸は投与後の経過時間です.血中濃度は,”C”や”Cp”であらわします.

さて,グラフは服用後6時間経過までを示しています.一番効果が発現する時間はどこですか?

経過時間を示す横軸の補助線がないので,わかりにくいですが,みなさんなら,何時間と答えますか?また,そう考えた理由は?

答えは,血中濃度が一番高い時間ですから,約1時間後ぐらいでしょうか?理由については,このセクションを読んでいただければ理解できると思います.

医薬品の中で最も一般的な服用方法である,経口投与(口から飲む,普通ですね)をされた薬物が,体内でどのような経過をたどるかを示します.

経口投与された薬剤は,水が存在する環境で崩壊し,含まれる有効成分である薬物が水に溶解し,溶解した薬物が小腸上部で腸壁を通過します.これが【吸収】です.そして吸収された薬物は,門脈を経て肝臓で【初回通過効果】を受け,血流で全身に運ばれます.これが【分布】です.その後,主に肝臓で【代謝】され,体外へ【排泄】されます.

この過程を,くすりの一生としてまとめると

各々の過程の頭文字を取り,薬物の体内動態をADME(アドメ)と総称されます.

ここで,バファリンの血中濃度グラフはわかりましたが,他の薬剤とくらべてどちらが短時間で効果が発現する知りたいときに,グラフ(図)を比較して比べるのは,少々面倒ですよね.

そこで,血中濃度グラフの特徴を表す4つの指標(数値)を使います.グラフの絵(画像)で比べるより,数値で比較する方が簡単です.

投与後に最大となる点の最高血中濃度を【Cmax

最高血中濃度に到達する時間を【Tmax

ある時点での血中濃度が半分に減少する時間を【T1/2

血中濃度曲線と横軸で囲まれた部分の面積を【AUC

AUCは,薬物血中濃度時間曲線下面積(Area Under the Curve)の略号であり,体内に吸収された薬物量の指標になります.

T1/2は,生物学的半減期といいます.