私たちが普段よく利用している薬剤を例にして,”製剤”について考えたいので,よく知られているバファリンAを例にみてみましょう.
引用元:バファリンA
バファリン錠の1錠の重さは,約0.5gです.mgに直すとどうなりますか【500mg】
有効成分の量は,2錠あたり(1回分の服用量です)の値を示しています.1錠中の有効成分であるアスピリン(アセチルサリチル酸)の330mgはどの程度の量でしょうか?
実際にやってみると下の図になります(粉末は本物のアセチルサリチル酸の原末です).
この程度での量であれば,なんとか粉末のアセチルサリチル酸を計り取って飲む(服用)ことは出来そうですね.
しかし,アムロジピンでは出来るでしょうか?
アムロジピン錠「サンド」の添付文書から引用して,アプロジピンの量を確認してみます.
引用元:アムロジピン錠「サンド」,添付文書より,サンド株式会社,2022年12月改訂(第17版)
アムロジピン5mgで考えてみましょうか.5mgなんて,330mgのアセチルサリチル酸の量から考えると,それこそ”耳かき”で取るレベルの量ですよね.1回ぐらいは,なんとかしようと思うかもしれませんが,毎日計り取って飲むなら嫌でしょう.たとえ粉末を5mg毎に包装しても,アムロジピンが包装紙に付着して,定量飲めるか不安です.
そこで,使いやすい形の”製剤”にする訳です.
多くの場合,医薬品の主成分だけでは,錠剤の形にはできません.アセチルサリチル酸が330mgあればなんとか錠剤にできそうですが,たぶん,出来たとしても,もろくて少しの衝撃で割れると思います.
そこで,錠剤にするため(製剤化)に加える物が添加剤で,賦形剤(ふけいざい,と読みます)とも言われます.
アムロジピン5mg「サンド」の場合,1錠の重さが160mgでアムロジピンベシル酸塩が約7mgですから,残り約150mgが添加剤(賦形剤)になります.
添加剤にも決まりがあり,注意点を含めまとめたものを以下に示します.
まず,”医薬品の添加剤”については,日本薬局方に,
•日本薬局方製剤総則の製剤通則(6)項 添加剤における規定
•添加剤は,製剤に含まれる有効成分以外の物質で,医薬品の有用性を高める,製剤化を容易にする,品質の安定化を図る,又は外観をよくするためなどの目的で用いられるものである.必要に応じて賦形剤,安定剤,保存剤,緩衝剤,矯味剤,懸濁化剤,乳化剤,着香剤,溶解補助剤,着色剤,粘稠剤などの適切な添加剤を加えることができる.
•ただし,使用される添加剤はその製剤の投与量において薬理作用を示さず,無害でなければならない.また,添加剤は有効成分の治療効果を妨げ,又は試験に支障をきたすものであってはならない.
引用元:第十八改正日本薬局方
添加剤は,薬理作用を示さない物質です.これは,当然と言えば当然で,薬剤の有効成分が,たとえば血圧を下げる効果(薬理作用)を示す物質で,添加剤が血圧を上げる効果を持つ物質なら,困りますね.また,もう一つ,”製剤の投与量においては薬理作用を示さず,無害でなければならない”に注意してください.普通に使用される,つまり,製剤化するために使用する添加剤の量では薬理作用はなく,無害であることです.