脂質と脂肪は違いがありますが,ここでは”脂肪”として説明します.
脂肪には,主に中性脂肪,リン脂質,コレステロール,糖脂質,遊離脂肪酸の5種類があります.
食事から摂取している脂肪は,中性脂肪が多く,1gあたり9kcalのエネルギーを産生します..食物から摂る栄養は,体を構成するやエネルギーとして使われないと,その多くは中性脂肪に形を変えて皮下などに蓄積されます.飢餓などの万が一の場合に備えて,エネルギーとして蓄えます.しかし,現在は,栄養過多と言われており,肥満から生活習慣病への移行が懸念されています.
中性脂肪の消化吸収は,胆汁酸とリパーゼにより遊離脂肪酸とモノグリセリドに分解され,その後,吸収されやすい形(ミセル)になって,小腸から吸収されます.
次に,遊離脂肪酸とリン脂質の構造を見ましょう.
遊離脂肪酸は他の化合物と結合していない脂肪酸を指しますから,脂肪酸を考えます.
脂肪酸は,R-COOHです.
”R”は,長鎖炭化水素であり,-C-C-C-C-などです.この長鎖炭化水素にカルボン酸(-COOH,カルボキシル基)が結合しています.
脂肪酸と聞くと,なじみがないと思いますが,脂肪酸はみなさんがほぼ毎日使っている”石鹸”の主成分です.脂肪酸をアルカリ化した物が汚れを落とす役割を果たします.
では,リン脂質とはどんな形をしているでしょうか?
引用元:リン脂質の一種である,ホスファチジルコリン(レシチン)の構造式
ホスファチジルコリンは,2つの脂肪酸(オレイン酸とパルミチン酸)・グリセリン・リン酸・コリンが複合した構造を持っています.
リン脂質も聞き慣れないと単語だと思いますが,リン脂質は,細胞の細胞膜を構成する成分です.細胞膜の構造は下の図のようになっています.
引用元:細胞膜の構造と脂質の分布の非対称性
細胞膜は,脂質二重層になっています.上の図のリン脂質の部分をもう少し詳しく書くと下の図になります.
細胞が水の中にあると考えてください.もちろん細胞の中にも水が詰まっています.脂肪酸は疎水性という性質があり,水が嫌いです.疎水性は,英語では” hydrophobic(hydroは水,phobicは怖がる)”です.リン酸+コリンの部分は親水性で,水が好きです.親水性は,英語では” hydrophilic(philicは親和性という意味の接尾語です)”です.
細胞膜の周りは水ですから,脂肪酸はできるだけ水に会いたくない,逆にリン酸+コリンの部分はできるだけ水と接していたい.となると,脂肪酸部分が向かい合う方が平和になるため上の図のような構造になります.
※親水性,疎水性は相対的な概念です.
ここで取り上げた細胞膜ですが,この細胞膜が壊れて様々な反応が起こるメカニズムがあり,アラキドン酸カスケードと言います.