糖質の代表的な物質である”デンプン”を見ましょう.お米の成分ですね.
デンプンとは,植物の光合成によって作られる炭水化物(多糖類)です.グルコース(ブドウ糖)が多数つながった構造です.なお,グルコースとブドウ糖という単語は,両方とも使われますが,くすり関係では,グルコースの方が多く使われていると思います.
構成単位であるグルコースは,
引用元:グルコースの構造(一部改変)
という構造をしており,分子式はC6H12O6となり,炭素,水素,酸素で構成されている六炭糖です.
センセー!炭素の”C”がありません!
グルコースの構造式の書き方は複数あります.この構造式の書き方の場合,炭素ー炭素結合は”線(棒?)”で書きます.グルコースの構造式を見てください.赤色の矢印で示した所が炭素原子です.6個ありますね.
センセー!炭素はわかりましたが,水素原子が無いじゃないですか?
これは水素原子だけすべて省略して書くためです.他にもルールはありますが,炭素ー炭素結合は”線”で,水素原子だけすべて省略して書くと覚えておいてください.これは,今後,医薬品の構造式を見るときに必ず役立ちます.
デンプンは,グルコースがグリコシド結合によって重合した天然高分子化合物であり,アミロースとアミロペクチンからなります.
引用元:デンプン | グリコ栄養食品
”アミロース”はグルコースがα-1・4結合で結合した直鎖状の構造です.
”アミロペクチン”はアミロースの直鎖に,さらにα-1・6結合でグルコースが結合し分岐した構造をとった高分子化合物です.
※α(”アルファ”と読みます)
デンプンは,α-グルコースからできていますが,セルロースはβ-グルコースからできています.野菜や果物,穀物類から摂取されるセルロースはヒトの消化酵素では分解されないが,不溶性食物繊維として整腸作用など様々な働きがあり,腸内細菌により分解されてエネルギーとしても利用されます.
余談ですが,セルロースの食物として利用方法が見つかれば,食糧問題は一気に解決する可能性があります.
ヒトがデンプンを含む食物を食べると,まず口腔内でだ液に含まれる消化酵素アミラーゼにより,アミロースとアミロペクチンのα-1・4結合が切断されます.
十二指腸に送られると,膵臓から分泌する消化液に含まれるアミラーゼにより二糖類の”マルトース”にまで分解されます.
次に小腸の柔毛でマルトースを分解する消化酵素”マルターゼ”により,マルトースはグルコースにまで分解され,小腸内壁から吸収されます.
マルターゼは,αーグルコシダーゼと呼ばれる酵素とほぼ同じです.
まとめると,デンプンは分解されて最終的に単糖のグルコースとなって小腸から吸収されます.
ここで取り上げたαーグルコシダーゼの働きを妨害する物質が,糖尿病治療薬として使用されています.
※デンプンを単糖に分解させないようにすれば,グルコースとして吸収できなくなりますね.